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いまなお多くの人たちに影響を与え続けている経営の神様・松下幸之助。


経営環境がますます厳しくなっている現在、私たちは改めてその経営哲学に真摯に耳を傾けることが求められています。


松下幸之助の謦咳に接した大西宏さんと谷口全平さんに、「矛盾することを同時に成し遂げる」松下経営の神髄を教えていただきました。


矛盾することを同時に成し遂げる


〈大西〉

幸之助さんの生き方や考え方に、私は自分の親以上に影響を受けました。


なかでも私の人生のバックボーンになっているものをいくつかご紹介しますと、1つは、


「できないからできる」


という言葉です。


私が音響事業部に所属していた時に、8,000円くらいで販売していたトランジスタラジオが5万台くらい売れていたんですけれども、幸之助さんが「もう少し売れるはずだ。


半額にできないか」とおっしゃったんです。


最初、それは無理だと誰も本気にしなかったんですが、しばらくして「もうできたか」と。


幸之助さんは本気だということで、現場もようやく真剣に取り組み始めたんです。


その時は幸之助さんを交えてそのトランジスタラジオをバラバラに分解し、1つひとつの部品を設計からやり直した結果、本当に半額になって、そのトランジスタラジオは200万台も売れたのです。


〈谷口〉

それはすごいですね。


〈大西〉

その時、バラバラにしたものを一人ひとりが知恵を出し、それからみんなの知恵を集める。


本まで遡り、衆知を集めたら知恵というのは無限だということを繰り返し言い聞かされましてね。


できないからできるというのは、以来私の信念になりました。


また、「矛盾することを同時に成し遂げなければ、大きな成功はない」


という言葉にも影響を受けました。


例えば、製品のコストを下げようとすると品質も下がるということがありますね。


そういう時には中途半端ではなく、品質の向上とコストダウンの両極を徹底追求する。


すると想定外のいい知恵が生まれるというのです。


九州の販売会社の責任者の時に、コスト削減のために複数の拠点を1つにまとめたんです。


するとどうしてもお得意先との距離が遠くなって不便になり、売り上げが減りそうになりました。


そこで私はこの教えを思い起こし、1つになった拠点の品揃えを圧倒的に増やし、配送の回数を増やしました。


さらに余った人員を市場開発チームに充てて顧客開拓に一層力を入れ、業績向上を実現しました。


そうした体験からも、矛盾する両極を中途半端でなくとことん追求していく先に、まったく新しい世界が開けてくることを実感しました。


(本記事は『致知』20115月号 特集「新たな地平を拓く」より一部を抜粋・編集したものです。)